症状物を握ったり掴んだりすると親指の付け根が痛い

物をつまむ時ビンのフタを開ける時など母指に力を必要とする動作で、手首の母指の付け根(CM関節)付近に痛みが出ます。進行するとこの付近が膨らんできて母指が開きにくくなります。

病期が進行すれば第1中手骨基部の背側への亜脱臼や骨棘、炎症による腫れなどで母指基部橈背側の隆起“Shoulder sign”を認め、母指の内転可動域の拘縮およびMP関節の過伸展による”スワンネック変形(白鳥の首)”を呈します。また関節を動かしたときの轢音(ジョリジョリ感)を訴えることもあります。

原因と病態母指CM関節の骨が変形する

第1中手骨大菱形骨の間の関節(第1手根中手骨関節:CM関節)は、母指が他の指と向き合ってつまみ動作ができるように大きな動きのある関節です。


その分使い過ぎ老化に伴って、関節軟骨の摩耗が起きやすく、進行すると骨が変形して関節が腫れ、また亜脱臼してきて母指が変形してきます。
母指CM関節症は中年女性の10%以上にみられ、閉経女性の1/4〜1/3においてレントゲン写真上、関節症変化を認めると報告されています。女性は閉経を迎えると女性ホルモンの中でも「エストロゲン」が急激に低下し、骨や関節への影響が強くなると言われています。母指は手の機能の40%、全身機能の1/4に関与するとされており、高齢者の生活レベルを低下させる要因の1つとなります。
母指CM関節症のステージ分類は、レントゲン写真を用いたEaton分類で区別されます。

Stage1では、関節裂隙が正常からやや開大しており、関節症の初期で滑膜増生を反映する所見である。
Stage2では、関節裂隙の軽度狭小化と2mm未満の骨棘を伴うものである。
Stage3では、関節裂隙の狭小化がさらに進行し、2mm以上の骨棘を有する。
Stage4では、Stage3に加えて、STT関節(舟状骨-大菱形骨-小菱形骨間)に退行性変化が及ぶものとする。
※Eaton分類は現在最も使用されていて、母指CM関節症の進行の程度をレントゲン評価したものです。

レントゲン所見は、必ずしも臨床症状と相関しないこともあり、変形が強くても可動域制限があって骨棘などにより安定していれば、痛みが軽度な場合もあります。

治療と予防固定装具で安静が大事、指を開く運動を積極的に

保存療法(手術をしない治療方法)が第1選択されます。マッサージや特殊電気治療、局所の安静を目的に当院では、母指CM関節の保護用の装具を熱可塑性ニット素材(オルフィット)で作成します。

オルフィットは、患者さんの手の形に応じて形作ることが可能なので、かなりフィットします。またいつでも簡単に取り外す事ができるので、衛生的です。
痛みが軽減してきた時に、軽症例には母指外転筋の筋力トレーニングを行います。
母指の等尺性運動(関節運動をさせずに筋収縮を得ること)、MP関節・IP関節の他動関節可動域訓練などがあげられます。運動療法によって関節を痛めないように、愛護的に行うことが重要です。
炎症や疼痛が強い場合、また2時間以上痛みが持続する場合は行わないでください。
①運動を行う前にストレッチを行います。ストレッチによりCM関節の内転・屈曲拘縮の予防をします。
②⻑母指外転筋と短母指外転筋の等尺性運動を行います。

※⻑母指外転筋と短母指外転筋の等尺性運動により、母指内転筋による母指CM関節の屈曲・内転変形力を減らします。しかし⻑母指伸筋腱の筋力増強は、母指CM関節の亜脱臼を増悪させる可能性があるため、注意しましょう。

親指の付け根が変形してきたり、変形がなくても痛みが生じる場合は、大東市住道にある当院へ一度ご来院ください。