症状手が痺れてつまみ動作ができなくなり物を落とす
手根管症候群は手の神経を司る「正中神経」の障害としてよくみかける絞扼性神経障害です。正中神経は手にとって最も重要な神経で、正中神経の障害は、鋭敏な感覚と巧緻性(つまみ動作など)を要求される手にとって致命的なダメージになります。
正中神経は、母指から環指母指側1/2までの掌側の感覚を支配し、前腕部では前腕の回内や手関節の掌屈、手指の屈曲、さらに手部では母指球筋などを支配しています。
肘の少し上で正中神経と分かれる前骨間神経は母指IP関節の屈曲と示指DIP関節の屈曲をする筋肉などを支配していますが、皮膚の感覚は支配していません。
手根管症候群は、母指から環指橈側1/2までの掌側の感覚障害、手関節の掌屈、手指の屈曲、さらに手部では母指球筋の筋力が障害されます。
前骨間神経麻痺では母指IP関節と示指DIP関節の屈曲ができなくなりますが、皮膚の感覚障害はありません。その時に母指と示指で丸を作らせると母指IP関節過伸展、示指DIP関節過伸展となり、涙のしずくに似た形となり、「tear drop sign」陽性になります。
こういった症状に至ると日常生活での問題としては書字がしにくくなったり、物を持つと落としやすくなってきます。
チネル徴候とは、末梢神経の絞扼部位(手根管部)をたたいたときに、神経の支配領域にチクチク感や蟻走感が生じることをいいます。 健・患側差より神経の絞扼部位が特定でき、また神経の回復状況も把握できます。
原因と病態手根管部で正中神経が圧迫されて手が痺れる
手根管症候群は手根管内での正中神経の圧迫や反復される刺激(手指を酷使する仕事など)によって引き起こされ、手関節部より遠位(指先側)の正中神経支配領域における疼痛や感覚障害、および支配筋の筋力低下や萎縮を呈する症候群です。
45歳から65歳の年齢層に多くみられ、男女比は1:3と女性に多いとされています。
エコー検査では以下のような画像が描出されます。
横手根靱帯(屈筋支帯)部で正中神経が圧迫され、圧迫部位から末梢では「偽神経腫」と言われる神経の腫れが確認できます。横手根靱帯部で何が起こっているのか、簡単に言うと水を流すためのホースを手で潰して水の流れを悪くしている状態と同じ現象が起こっています。水の流れが悪くなる=痺れの出現、と言う事になります。
痺れを誘発させるテスト法の代表的なのが「ファーレンテスト」になります。
このような形を作ると、患側の正中神経領域(母指から環指橈側1/2までの掌側)に痺れが誘発されます。
このような絞扼性神経障害が発症から長引けば長引くほど治りも遅くなります。また絞扼期間が長引くと運動神経に障害を残すこととなります。病態が進行し手術をしたら「感覚神経」は元通り戻ってきますが、「運動神経」は末梢の運動神経に伝達ができず、筋力は元通りにならず筋萎縮状態のままになってしまいます。
手が痺れている時に、緩和させようと手を振ると痺れが軽減する場合があります。これは手根管症候群のテストで「フリックテスト」と言います。
治療と予防夜間装具が第1選択し改善がなければ手術
骨折や脱臼などの外傷や腫瘤によるものは早期に手術が必要ですが、原因が明らかでないものや回復の可能性のあるものは保存的治療が行われます。
保存的療法としては局所の安静を目的とした夜間装具(ナイトスプリント)を行い、経過観察を行います。
またリハビリはマッサージや電気治療を行い、状態に応じて運動療法で指先を上手に使えるようにしていきます。
日常生活で手の痺れが気になり、物を持つことが困難になってきている場合はお早めに大東市住道にある当院へ一度ご来院ください。