症状手首や母指を動かすと手首が痛くなる
母指を広げると手関節の母指側の部分に腱が張って、皮下に2本の線が浮かび上がります。
ド・ケルバン病は、その母指側の線である「短母指伸筋腱」と「長母指外転筋腱」が手関節の母指背側(手の甲)にある腱鞘(以下、手背第1コンパートメント)を通るところに生じる腱鞘炎です。手背第1コンパートメントとそこを通過する腱(短母指伸筋腱と長母指外転筋腱)に炎症が起こった状態で、腱鞘の部分で腱の滑走がスムーズでなくなり、手関節の母指側に痛みが生じ、時に腫れて赤くなる場合があります。母指を広げたり、母指を握り込んだりするとこの場所に強い痛みが走ります。
①短母指伸筋腱:主に母指を伸ばす働きをする腱。
②長母指外転筋腱:主に母指を広げる働きをする腱。
③手背第1コンパートメント:①と②の腱が通るトンネル。
原因と病態母指の酷使意外にホルモンが関与する
中年以降の女性や周産期の女性に多発することが多い疾患です。つまり20歳代と50歳代に多発しており、女性が圧倒的に多く認められます。利き手に多いとは限らず、ほほ左右同程度に発症し、両側発症は少ないです。内訳は、家事または手の過度使用後が多く、次いで妊娠 ・出産後、外傷後、スポーツ活動に続発したものは少なかったと報告されています。
母指の使い過ぎによる負荷のため、腱鞘が肥厚したり、腱の表面が傷んだりして、さらにそれが刺激し、悪循環が生じると考えられています。特に手背第1コンパートメント内には、2つの腱を分けて通過させる隔壁が存在し、これがあるために狭窄が生じやすいのです。
20歳代に多発する原因には、パソコンなどによる母指の過度の使用以外に、妊娠・出産後の女性ホルモン(エストロゲン)の関与や、出産を契機とした育児による新生児の頭部の保持があげられます。この場合には症状が比較的軽度で、保存療法が第1選択となります。
治療と予防固定装具を作成して極力安静にする
母指の安静を保つために、当院オリジナルのオルフィット装具を作成して母指の動きを制限させます。症状が強い時は、日中も着用していただきますが、基本的には夜間は必ず着用して頂きます。
治療に関しては、腫れや痛みが強い場合はアイシングを行います。急性期の場合は、微弱電流機器(エレサス)を用いて除痛を行い、同時に前腕部のマッサージを行います。
症状が緩和しない場合は、病院でのステロイド注射を提案する場合もあります。また、手の酷使だけではなく女性ホルモンのバランスの低下が著しい場合は、エクオールの服用をお勧めする場合もあります。
しかし、保存療法を3ヶ月以上行っても全く効果がなく、有効でも再発しやすく痛みが強いものや職業などの事情で早期に回復を望む患者では、手術が適応となります。その場合は、連携病院をご紹介致します。
このように、指を使い過ぎたりして親指(母指)の腱鞘炎になってしまった方は、大東市住道にある当院へ一度ご来院ください。